「Wacom Live 2010 Wacom × MdN Creators Session」では広告写真を事例に、フォトレタッチのテクニックのセッションが行われた。近年、コスメティックやファッションのビジュアル作成ではデジタル撮影した写真をベースにして、レタッチで仕上げることが多い。同セッションではこうした現場で使われるさまざまなテクニックが紹介された。
同セッションを担当したのは株式会社フォートンに所属するレタッチャー、toppy氏。フォートンは創立20周年を迎えるデジタルイメージの先駆的な会社で、デジタル写真の黎明期からデジタルプロセスを駆使してイメージ作成に取り組んでいる先駆け的な存在。toppy氏は同社のトップレタッチャーとして活躍中。

トップレタッチャーとして活躍中のtoppy氏(左)
われわれは、すでにレタッチが終わったあとの状態の広告写真やファッションのビジュアルを見る機会はあるが、レタッチ前のビジュアル、つまり人の肌そのままの状態のものを見る機会はない。同セッションでは、レタッチ前とレタッチ後の状態を何度も往復し、比較することで、レタッチの経過を知ることができる貴重な機会となった。
セッション冒頭で、「レタッチ前の写真を公開したいと打診したら、ほとんどがダメ。もう無理と思っていたところでギリギリ許可が下りました」というエピソードを公開した。
フォトレタッチの現場テクニックの紹介は、まずペンタブレットの設定から始まった。Intuosシリーズは「3」から「4」に変わって特に使いやすくなったのは、片側に搭載されたファンクションキー。このキーによってショートカットのためにキーボードに触る回数を大幅に減らすことができるからだという。参考としてtoppy氏がレタッチのために設定しているファンクションキーの紹介から行われた。
・スタンプツール
・ブラシツール
・アンドゥー(押した回数だけ戻れるように設定)
・X(描画色と背景色の切り替え)
・ハンドツール(スクロールや移動)
・Shiftキー
・commandキー
・ラジアルメニュー
タッチホイール+機能切り替えボタンには上から以下のように設定している。
・ズームイン&ズームアウト
・ブラシの大小
・ブラシの硬さ
・無効
「ビューティーの処理前後を切り替えて比較できる機会はないのでじっくりと見てほしい」とあおりを入れて、ついに前後の写真が公開。大型スクリーンにレタッチ前とレタッチ後の写真をカチカチを切り替えながら説明すると、会場からはため息が漏れた。処理前は目の充血やクマやメイクの粗まで見えてしまっている。どこをどのように修正したのかが一目で分かる、まさに衝撃の瞬間だった。
ここからはPhotoshopを起動して、具体的なレタッチの紹介に入った。まず最初はスタンプツールを使ってしわを抑える方法の紹介から。修正は新規レイヤーを作成して、その新規レイヤーを選択した状態行う。「薄めすぎた」と思ったときにマスクをかけて修正できるようにするためのものだ。
コツは肌のキメを大事にしたいので似たような色をとることと、ブラシのサイズは小さめに設定すること。大きすぎると、キメがなくなってしまうからだ。また、消すのではなく、弱める感じで修正すること。人間のシワは表情の中にもあるし、少しあったほうが立体感が出てくるからだ。あまり修正しすぎると人間っぽさが失われてしまうそうだ。
次にトーンカーブで目の下のクマなどのムラを抑える。1つ濃度を乗せたトーンカーブを作り、マスクをかけてレイヤーの名称を「プラス」とする。もう1つ、マイナスのトーンカーブを作ってマスクをかけて名称を「マイナス」とする。黒くたまっているところのマスクを薄めて、修正をしていく。
目の充血は、特定色域で赤を抑え、線の差を少なくする。赤が強い部分は赤のトーンカーブを作り、さらに調整をして修正をしていくという。
「充血の修正で一番気をつけるのは目の立体感です。目は球で奥行きがあるので、それを失うと不自然に見えて、絵のようになってしまいます」(toppy氏)
以上で基本的なレタッチ機能の紹介は終了。レタッチというとPhotoshopのあらゆる機能を使って作業を行っているように思えるが、実はスタンプツールとトーンカーブの2つで基本的な肌のレタッチを実現している。フォトレタッチというのは少ない機能で、凄く地道な作業を繰り返してやっているとのことだ。
続けて、まつ毛を描く方法や、強調して唇にラメを入れる、産毛をフィルターでとる、という3つのテクニックの紹介が行われた。
注目はまつ毛を描くテクニック。toppy氏は日常的な作業の中でまつ毛を描くことは多く、これまでのIntuosでは一回まつ毛を描いてから、毛の先端をマスクして消す必要があった。ところが、Intuos4では「抜き」の精度が高くなったために、毛を一筆で描けるようになったという。その効果は、「Intuos4を使えば誰でもまつ毛が描けるから、私たちが駆使してきたテクニックが使えなくなってしまいますね。どうしましょう?」と語るほど。作業効率でいうなら、30分ほどかかっていたのが、Intuos4を使えば10分でできるようになったという。
今までレタッチというと「上書きするような修正」という印象が強かったが、toppy氏の話を聞いてから「目立たなくする」という印象に変わった。自然さを残すことが大切ということが分かったセッションだった。そして、これほどの修正がPhotoshopの基本機能とIntuos4との組み合わせだけでできるということも印象的だった。